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レーザ溶接|原理と仕組み、異材接合について紹介

金属加工において重要な役割を果たす「溶接」。中でも「レーザ溶接(※)」は数ある溶接方法の1つですが、自動車産業、航空宇宙産業、電子機器産業など、さまざまな分野で広く使用されています。本記事では、レーザ溶接の原理と仕組み、特徴とメリット、発振器の種類、レーザ溶接で接合できる材質や異材接合について紹介します。

※ 一般的には「レーザー溶接」と呼ばれていますが、JIS規格で定められているものは「レーザ溶接」です。

目次

1. レーザ溶接とは
2. レーザ溶接の原理(仕組み)
3. レーザ溶接の種類
4. レーザ溶接のメリット(特徴)
5. レーザによって溶接できる材質
6. 吸収率の低い材質への溶接
7. 異なる材質同士の溶接
8. 最後に

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40年間の実績を持つ住友重機械工業 メカトロニクス事業部では、お客様がご希望される加工結果から検証テストを実施し、条件出しの結果に沿った装置をご提供致します。また、導入後のレーザ加工機・発振器のアフターフォローも行っておりますので、ご安心して導入いただけます。まずは無料相談からお問い合わせ下さい。


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レーザ溶接とは

レーザ溶接とは

レーザ溶接とは、人工的に作り出されたレーザ光を熱源として集光した光を対象物に照射し、金属を局所的に溶融・凝固させることによって金属同士を接合させる溶接方法です。

溶接方法は「融接法」「圧接法」「ろう接法」の3つに分類されますが、レーザ溶接は「融接法」に含まれます。集光部において非常に絞られた小さいスポット径をもち、他の溶接方法と比較してエネルギー密度が非常に高いことから、高速かつ深い溶け込みと熱影響部の抑制を両立できることが特徴の一つです。また、異種金属素材でも接合できる、光走査技術による加工結果のコントロール性の高さ、非接触で溶接できるため消耗品がほぼ無いなどといった特徴を持ち、自動車産業、航空宇宙産業、電子機器産業など、さまざまな分野で広く使用されています。

特に高品質かつバラツキの少ない溶接を必要とする材料や部品の接合に適しており、部品の軽量化や高い耐久性、気密・水密性など、様々な機能を付加する必要がある部品製造の場面で活躍しています。

レーザ溶接の原理(仕組み)

レーザ溶接機は「レーザ発振器」「光路」「レーザ光学系」「駆動部」「シールドガス系」から構成されています。

まず「レーザ発振器」で励起光源をレーザ媒体(固体や気体)に照射し、吸収させることで発光した独自の光を共振器ミラーで反射させて何度も増幅させ、レーザ光を発振します。生成されたレーザ光は、光ファイバやミラーなどで作った「光路」によって伝送され、「レーザ光学系」の集光レンズによって加工に適したサイズまで集光され対象物を溶解します。通常、集光されるサイズはおおよそΦ1.0mm以下です。特にビーム品質の良いファイバレーザでは、数十ミクロン程度まで小さく絞ることが可能です。そして被金属部の酸化を防ぐために溶接部にシールドガス(アルゴン、ヘリウム、窒素など)を吹付けると共に、スパッタ(溶融金属の飛散)を軽減し、駆動部でワークを移動させる、もしくはレーザ出射ヘッドを動かすことで、任意の場所へレーザを当て、溶接を行う仕組みとなります。

レーザ溶接の種類

レーザ溶接に用いられるレーザ発振器は、出力を高めることが容易な「気体レーザ」または「固体レーザ」が主です。
「気体レーザ」は、CO2(二酸化炭素)を発振媒体として用いる「CO2レーザ」、「固体レーザ」は「イットリウム・アルミニウム・ガーネット」を発振媒体とする「YAGレーザ」がそれぞれ代表的です。また近年「半導体レーザ」も高出力化しており、限定的ではありますが溶接に使用されるケースもあります。レーザの種類ごとにレーザの持つ波長やビーム品質が異なるため、加工内容や対象毎に適したレーザを選択する必要があります。
以下でそれぞれの特徴をご紹介します。

CO2レーザ溶接

レーザ溶接の中でも一般的で長い歴史をもつ種類が「CO2レーザ溶接」です。
二酸化炭素を放電等で励起して誘導放出させる発振器で、波長は10.6μmですが、共振器ミラーによる波長選択を用いて9.6μmまで短くすることができます。出力形態は連続発振(CW)とパルス発振(P)が選べ、高出力でもΦ0.6mm程度に集光できるのが特徴で、狭い範囲で深く溶け込む溶接が行えます。波長が長いため、発生させたレーザーを集める「集光光学系」では遠距離に光エネルギーを伝えるファイバ伝送は行えず、主にミラーや特殊なレンズによってレーザを伝送し集光します。

YAGレーザ溶接

固体を媒質とする「固体レーザ溶接」の代表的な種類が「YAGレーザ溶接」です。
YAGとは「Yttrium Aluminum Garnet」(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)というガーネット構造の人口結晶のことです。イットリウム(レアアースの一種)とアルミニウムの複合酸化物に、Nd(ネオジム)やEr(エルビウム)などのレアアース(希土類元素)を添加したものが媒質として使用されます。 YAGレーザはCO2レーザと比べると波長が短く、金属が吸収しやすい1,064nmという波長を持つため、少ないエネルギーで金属を溶融させることができる点がレーザ溶接に適しています。また、特殊な例を除き、ガラスを透過するレーザのため、取扱いが優れるファイバー伝送が可能です。一方で、YAG結晶の励起にはフラッシュランプの点滅が必要であり、発熱が多い為、冷却機構の構築が大規模になりメンテナンスコストの負担が大きくなる傾向があります。

ファイバレーザ溶接

ファイバレーザは、生成した励起光の増幅と伝送にファイバを用いるレーザで、YAGレーザと同様に金属が吸収しやすい1,070nm付近の波長を持ちます。数あるレーザーの中でも高出力化が比較的容易であり、レンズによる集光によってエネルギ密度を上げやすく、金属に対して深い溶込みを得られる点が大きなメリットです。また、熱を極力抑えた低入熱溶接や融点の異なる異種金属の溶接など、レーザ条件やプロセスツールによって様々な溶接が可能な柔軟性を持つのも特徴です。YAGレーザと比べてビーム品質が良いためだけでなく、ファイバ伝送で取り回しが良くミラー調整やランプ交換など発振器内部のメンテナンスが不要である為、そのランニングコストの低さから、近年では最も幅広く使われています。

当社は40年以上前からYAGレーザを取り扱っており、現在ではファイバレーザをメインとして扱っています。
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レーザ溶接のメリット(特徴)

ファイバレーザを溶接で使用する場合、以下のようなメリットがあります。

レーザ溶接のメリット

・ TIG溶接やプラズマ溶接など他工法に比べて低入熱で早く溶接できる
・ 加工対象の融点や硬度に関係なく非接触で溶接できる
・ 外部要因の影響を受けにくく、加工結果が安定しやすい
・ レーザパラメーターやレーザ光学系の調整によって溶接結果を制御できる

レーザによって溶接できる材質

レーザによって溶接できる材質は多岐にわたり、アルミ、銅合金等幅、レーザを吸収する材質であれば広く対応可能です。レーザはパワー密度とエネルギー密度が極めて高い熱源である為、ほとんどすべての材質を加熱、溶融、蒸発させることができます。つまり溶融状態が得られる材質であればどのようなものでも溶接できる可能性があります。

吸収率の低い材質への溶接

前述でレーザ溶接で接合できる素材は幅広く対応可能であるとお伝えしましたが、現在、電動車向け部品などで注目が集まっている銅、アルミニウムなど電気的特性に優れる金属は、レーザによる吸収率が低く溶接が難しい材質であり、レーザ照射時に発生するスパッタや、加工後の表面粗さ、内部ブローホールなど様々な課題が発生します。しかし近年は、最新のレーザプロセスを用いることで、スパッタの低減や溶け込み形状のコントロールなどが可能となっています。


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異なる材質同士の溶接

異なる材質同士の溶接は、材質によって融点・硬度・電気抵抗値等の違いがあり、特性を十分に把握した上で適切な加工方法を設計する必要があります。尚、銅とアルミニウムや銅とステンレスといった異種金属のレーザ溶接には常に課題が伴いますが、電気自動車や電子機器産業の分野において、そのような溶接に対するニーズは高まっている状況です。当社では電気自動車に用いられるバッテリー付近の異種金属接合ニーズにおける解決プロセスを紹介していますので、ご参考にして下さい。

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最後に

本記事では、レーザー溶接の原理と仕組み、特徴とメリット、発振器の種類、レーザー溶接で接合できる材質や異材接合について紹介しました。レーザ溶接は非常に狭いスポット径を持ち、エネルギー強度も強いため、母材の材質や厚みを問わず、非常に高精度で深い溶け込みの溶接を行えるのが特徴です。しかし銅やアルミニウムなどの高反射材や異なる材質同士の溶接は難易度が高い為、専門的な知識が必要になります。レーザ溶接用加工機の導入を検討される際、まずはお気軽に当社へお問い合わせ下さい。

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